「南国栖のあたりで、吉野川は右へ屈折し、『滝つ瀬』となって流れるが、その急流にえぐられた奇岩が、異様な姿で川床をうねって行く。竜神の信仰は、このような景色から想像されたに違いない」
(本文より)
<宮 滝>
<夢のわだ>
「吉野川が迂回するところに、丹生川上上社が建ち、川をへだてて神山らしい山ものぞめる。宿はこの神社の隣にとってあり、私はとうとうたる水音を聞きながら床についた」
(本文より)
「井光(いかり)という村は、ふりあおぐような山の天辺にあり、よく人間が住んでいると思うが、古代の道は尾根伝いを通ったらしく、神武天皇が尻尾の生えた人間に会ったのは、他ならぬこの井光の地であった」
(本文より)
<井光神社>
「柏木から、林道のようなせまい道を登ると、金剛寺の裏手の山へ出る。吉野川をへだてて、柏木、神之谷などの村が見渡され、南朝の皇子がかくれるには、絶好の地形のように見える」
(本文より)