「街道といっても、ようやく車が通れるほどのせまい道で、往来のはげしい国道から、人けのない田圃道に入ると、急に古代の世界へ連れ戻されたような心地がする」
(本文より)
「下は麓の方まで、美しい段々畑がつづき、山地とはいえ肥沃な土地であったことがわかる。この景色のいい所で、磐之媛は育ち、あの情熱的な歌が生まれたということは、私にとってひとしお感慨ぶかいものがあった」
(本文より)
つぎねふや 山代河を 河上り
わが上れば あをによし 奈良をすぎ
小盾 倭をすぎ わが見が欲し国は
葛城高宮 吾家のあたり(古事記)
「『悪事も一言、善事も一言』というのは、占いか予言をしたもののようである。そこから一言主の名は出たが、今でも村の人たちは、『一言(いちごん)さん』と呼んで親しんでおり、葛城をめぐる神社の中でも、もっとも霊験あらたかな神であった」
(本文より)
「ここには、一言主や高鴨より、一そう神さびた社があり、杉の大木の奥に、ささやかな社殿が建ち、御神体を拝む形になっている」
(本文より)
「鴨都波神社は、国道24号線にあるので、殺風景になってしまったが、高鴨神社には、神さびた雰囲気がある。ことに神社の下の池に、金剛山が影を落としている景色は美しく、万葉によまれた葛城処女を連想させる」
(本文より)
「なぜそんな所に興味をもったかといえば、神武天皇が即位されたのは、今の橿原神宮ではなく、おそらくこの柏原の地だからである」
(本文より)